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2020-05-21

栄光のウィーン・フィル オットー・シュトラッサー著 音楽之友社 1977年刊

いかにも日本向けの書名だが、ウィーン・フィルの第二ヴァイオリン奏者で、楽団長を勤めた人の著書だ。

署名の通り、ウィーン・フィルでの活動について書いているので、本業である国立歌劇場でのことについてはあまり記されていない。関連するので、全く触れていないわけではないが、むしろ、いろいろなことがありすぎるので、書かなかったのかもしれない。

オーケストラの活動は定期公演が中心になるので、多くの指揮者が登場する。1920年代からは現代での大指揮者といわれている人たちが活動を始めた時期なので、録音でも聞ける人が多く、親しみを持てる。

それと同時に、ザルツブルク音楽祭の話も多い。音楽シーズン以外の時期のウィーン・フィルの活動の中心になるのはこの音楽祭なので、興味深い話が多い。

内容の多くは、コンサートのこと、オーケストラの運営のことなどである。第2次世界大戦の時は、ウィーンは爆撃を受けているので、その時の被害の状況について記している。意外に思ったのは、ウィーン・フィルはアーカイブズを持っており、被害を避けるときには、楽譜と一緒に楽団運営に関わる文書も持って歩いていたことだ。爆撃の被害で、文書を置いていた場所が水浸しになり、文書が水に浮いていた、なんていう記述があるがちゃんと修復できたのだろうか、と心配したりした。何も被害については書いていないので、おそらく大丈夫だったのだろうと想像している。

楽団運営をした人らしく、記述の中に保管している文書に基づいて書いている部分があり、なるほどと思ったりした。

大戦中のオーケストラの運営についても記してある。戦後の活動にはあまり支障がなかったようだが、戦時下の活動には当然影響があったことも記されている。

現在でも人気のある指揮者が多く登場し、どのような指揮ぶりであったか、が記されているのでその点だけでも貴重な本だと思う。

訳文はちょっとこなれていないようだが、支障はなかった。オーケストラ活動の回想記としてはもちろん、このオーケストラが好きな人にとっても読んでみたくなる本だと思う。