ちょっと前に出た本だが、最近刊行されているのを知った。
相撲についての本なのだが、著者の視点は相撲=大相撲ではないようだ。もちろん、大相撲、つまり日本相撲協会が興行している相撲の話が多い。しかし、それらの話も、大相撲は多くある相撲の一つの形態で、色々な経緯があって現在の形で行われているのだ、という考えが根底にあって記されている。
そう言うことなので、多くの相撲についての本よりは視点が広いように思う。相撲=伝統という考え方があり、これは日本相撲協会の相撲興行にあたって基本構想のようだ。だが、著者は構想であるからこそより柔軟に事態に対応できるはず、という提案もしている。
物言いの時に、審判委員がタブレットを持って土俵に上がり、そのタブレットで審判室で見ている画面、つまりNHKの中継画面をみて協議してもいいのでは、という提案は素晴らしいと思う。
勝負の判定にビデオを導入したのは日本相撲協会が始めたことで、その先見性は素晴らしいとしつつも、テレビで相撲を観戦している人たちと同じ画面を審判員が見られないのでは、勝負の判定に疑問を持った視聴者への十分な説明ができない、という指摘はなるほどと思う。
もう行われていないが、以前、物言いのあったときの協議の内容を館内に場内放送で流すことをしていた。内容がよく聞き取れないのでやめてしまったのだが、こういうことも現在ならもっとやりやすくなっているはずなので、タブレットと合わせて考えてみてもいいと思う。
内容としては、個々の力士の勝負などについての蘊蓄を傾けるのではなくて、「大相撲について考えてみる」という趣を持った本だ。考えてみると、こういう内容の本は珍しいように思う。著者の視点に大相撲以外の相撲が入っているのは、学生時代に実際に相撲の競技者であったことが影響しているようだ。そのことが幅の広い視点を提供することにもなっている。肩肘張らずに鋭い指摘をさりげなく行なっている点で、配慮の行き届いた本だとも思われた。