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2023-10-20

東京のヤミ市 松平 誠著 講談社学術文庫 講談社 2019年刊

ヤミ市について書いた本を読んだことがなかったので読んでみた。そもそもヤミ市について書いた本というのは少ないようだ。その中の一冊というわけだ。

「ヤミ市とはどういうものだったのか」をそれを運営していた人々、店の様子、売られていた商品などについて丁寧に書いている。材料は同時代の記録や記事などを用いている。

ヤミ市の起こりからその終わりまでを落ち着いた雰囲気で書いていくのが素晴らしい。最後の方にヤミ市の実際を復元しているのでイメージを掴みやすい。一時的に盛んであってその姿を消してしまったものについて記述している貴重な著作だ。

巻末にある「ヤミ市キーワード集」「ヤミ市年表」は労作であり有用だ。もちろん参考文献一覧もある。

2023-10-16

ソース焼きそばの謎 塩崎省吾著 早川書房 ハヤカワ新書006 2023年刊

ソース焼きそばの起源を探る本だ。著者は『焼そば名店探訪録』というブログを主催し全国の焼きそば店を訪問している。

著者はソース焼そば大正初年に浅草周辺で誕生したとしている。ソース焼きそばは鉄板で焼くことが多いので露天との関係が想像されるが著者もそのあたりから推理を始めている。

詳細は本に譲るとして、身近な食べ物であるソース焼きそばの起源がわかっていなかったというのは意外な感じがする。むしろ、身近なものであるからこそ起源がわかりにくいのだ、ともいえそうだ。

著者の結論に賛成するかしないかはともかくソース焼きそばを広まり具合を地図上にプロットした図や各地の店の焼きそばの写真はこの料理の広まり具合を示していてみるだけでも楽しい。また巻末の「ソース焼きそば年表」と「参考文献」はソース焼きそばについての情報源として活用できそうだ。読んでいるとソース焼きそばを食べたくなる本でもある。

2023-10-12

櫓太鼓がきこえる 鈴村ふみ著 集英社 2021年刊

なんとなく呼び出しになった主人公の一年を描いている小説だ。

主人公の成長を描いている小説、といえようか。相撲の世界を描きながら裏方と言える呼び出しを選んだのは「成長」を地位の向上ではなく主人公の内面の成長として描くためだったのかもしれない。その分華やかな世界を扱っていても堅実な作品になっていると思う。

作者の瑞々しい感覚が素晴らしい。また部屋の力士の本場所での相撲をきちんとした手捌き記事として記しているところから見るとかなり相撲に詳しいようだ。その部分がしっかりと小説の中の一部になっているところは読み応えがあった。