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2023-03-17

異端の皇女と女房歌人:式子内親王たちの新古今集 田渕句美子著 角川選書536 KADOKAWA 2014年刊

この本は二つの部分に分かれる。式子内親王についての部分と女房歌人についての部分だ。どちらも新古今集の時代の人という共通点がある。それというのも著者の『新古今集 後鳥羽院と定家の時代』という著書の姉妹編だからだ。

新古今の時代は女性歌人が目立つのだが、それに焦点を当てている。この本を読んだのは式子内親王を「異端の皇女」と呼んでいるのでその内容を確かめたかったからだ。

著者によると「異端」と呼んだのは皇女であるのに百首歌を熱心に詠んでいたこと、気軽に臣下にあたる人に歌を送っていること、男歌の名手であること、などが理由のようだ。このほかにも、当時一般的だった今日から見ると迷信に思える事柄に注意を払わなかったこともあげられる。

式子内親王の歌は透き通るような美しさと時にみせる激しさとが特徴だ。限られた資料を用いて内親王の実態に迫ろうとしている。これは後年になって内親王に付託されたイメージを修正しようという試みでもある。

私は内親王の歌は静かな中に激しさをたたえた性格がそのまま歌に出ているのではないか、と思っていた。しかし著者の指摘によって、歌のテクニックも素晴らしいものなのだということがわかった。そういうことを明確にできたのは良かった。

内親王の後には女房歌人についての記述になる。これも女房歌人に後年まつわりついた伝説を取り去る考察が記されている。

これまで定説となっていた事柄に新しい光を当てていて歌のみならず色々なことを考えさせる著作となっている。

2023-03-03

式子内親王 奥野陽子著 ミネルヴァ日本評伝選 ミネルヴァ書房 2018年刊

内親王にして歌人という珍しい存在の式子内親王の伝記だ。百人一首の歌はよく知られているが、その生涯や人物についてはあまり知られていない。それを同時代の記録や歌集を駆使して描いている。

人物像を描くとしても歌の他には頼るものが少ないので自ずとその作品から考え方、感じ方を探ることになる。この本はそういう試みを行なっている。

式子内親王の歌は勅撰集等の歌集に多く入選している。また家集もあるが実際は残っている歌はほんの一部であるようだ。それでも作風を辿ることはできるようだ。

本の内容の大部分が歌の特に百種歌の解説、説明であるので所謂伝記を期待すると裏切られたようになってしまう。これは内親王の歌を検討することによって内親王の世界観に迫るという方法をとったためである。そのため歌の世界に詳しくない読者にはかえって難解になってしまっているかもしれない。しかし著者は丁寧にわかりやすく説明を行なっているので十分考えながら読み進めていけば著者の描いた式子像を味わうことができるだろう。

大袈裟に言えば歴史学と古典文学研究とが一体になったような著作と言える。今回よく理解できなかったこともあるので、しばらくしてまた手に取ってみたいと思っている。