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2022-02-25

剣術修行の旅日記 永井義男著 朝日選書906 朝日新聞出版 2013年刊

佐賀藩の武士牟田文之助が1853年9月から1855年9月まで剣術修行でほぼ2年間にわたって全国を旅した日記を元にした本だ。

丁寧な作りになっていて、巻頭には巡った土地の一覧表が、さらに終わりの方には他流試合のした道場の一覧が掲載されている。この二つの表を見るだけでもどこに行ってどのように他流試合をしたのかがわかるようになっている。

この本を読んでいてわかったのは、江戸時代においていつの頃からか剣術修行のためのやり方が整備され、剣術修行のための宿屋に泊まると、費用はその土地の藩が負担し、剣術道場への試合の申し込みは宿が手配してくれるようになっていたことだ。武士には剣術修行が必要だから、というので整備されたのだろう。この方法の起源とか定着する経緯が気になったが、もちろん、そのことについての記述はない。研究した人がいれば読んでみたいと思った。

剣術修行は、おそらくそれほど年代の違わない武士が回るので、これを契機に途中で友人を作ったりして交流のネットワークが作られていくことが示されている。武士たちの交流圏が意外と広いことがわかる。

また、どこに行っても酒宴を行っているので、そこにだけ注目すると物見遊山の旅かと勘違いしてしまいそうだ。

当時の旅の実態も仄見え、なかなか読みやすい本になっている。

この本が使った『諸国廻歴日録』は『随筆百花苑』第13巻に収められているので原文で読むこともできる。

2022-02-14

関取になれなかった男たち 佐々木一郎著 ベースボール・マガジン社刊 2022年

この本の紹介はここ にある。

登場するのは幕下筆頭まで昇った

  • 春日国(かすがくに)
  • 獅子王(ししおう)
  • 友鵬(ゆうほう)
  • 錦風(にしきかぜ)
  • 緑富士(みどりふじ)
  • 小金富士(こがねふじ)

の6人だ。関取まであとちょっと、と迫った人たちとも言える。

このうち友鵬だけが故人だ。

何よりも、著者の力士への温かい視線が嬉しい。 そして力んでいない書き方が元力士たちの人間像を浮かびあが らせている。もちろん、それぞれの力士の関係者にも丁寧に 取材している。

登場する6人は皆熱心に相撲に取り組んだのに関取の地位まで 上がれなかった人たちだ。著者はその原因に直接触れるより はそういう経験の後にどのように人生を送っていったかに注目 している。

中には、「関取になっていたらこの人と結婚していなかったか もしれない」という女性もいて、関取になれなかったことが必 ずしも残念なことではないのだ、と著者は言いたかったのかも しれない。

6人とも相撲界にいたことが何かしらの形でその後に生かされ ていることを伝えているのもよかった。全部読み終わると、 それぞれの力士には上がれなかった理由があったのだと何とな く気づくようになっていたのも嬉しい心遣いだった。

心温まる本だった。