「零戦・隼からYS–11まで」という副書名が内容を語っている。軍用機を生産した会社を扱っている本だ。軍需産業に携わった企業の動きに焦点を当てている。そのため個別の飛行機についての解説本ではない。
日本の飛行機の歴史が軍の研究から始まることは言うまでもないことなのだが、民間の航空機会社(運航する)会社があったのかどうかについては全く触れていないのでそれについての情報は得られない。焦点は軍と飛行機を生産する会社とのやり取りに当てられており、企業経営史の著作と見たほうがいいかもしれない。
軍の要求に応じてどのように飛行機を開発し増産していったのか、が具体的なデータを元に示されていく。飛行機生産について具体的な資料を挙げての記述は著者の得意とする所なのかわかりやすい。
もちろん経営的なことだけではなく、日本の航空機業界の持っている弱点について、開発の阻害要因についての指摘もある。この辺りは目配りが効いている。
YS-11の開発には軍用機メーカーだった会社の出身者が多く加わっているので触れたのだろうが、民間機を扱うことには唐突な感じもした。
それはともかく、産業としての航空機生産がどのように進展したのかについて経済史的な視点からの貴重な本であることに変わりはない。
なお、著者の行論には関係がない微細な部分について気になることがあったので記しておく。
52ページ中ほど
「仏印に基地を置く陸軍の第一一航空艦隊の」
「陸軍」は「海軍」のはず。
55ページの始めのほうの
「雷電・彗星・彩雲という戦闘機に」
では雷電のみが戦闘機で彗星は艦上爆撃機、彩雲は艦上偵察機。三機種共に斜め銃を装備して使おうというアイデアがあったのが共通している。