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2020-10-10

その後の慶喜 家近良樹著 ちくま文庫

書名のとおり、将軍を引いた後の徳川慶喜の動きをその死までを追った本だ。(似たような名前の本に『その後の海舟』というのがあったっけ)

著者の家近良樹は幕末の研究者で徳川慶喜についても業績がある人だ。

徳川慶喜は、将軍在職時はよく名前が出てくる人で、研究者も多いが、将軍でなくなった慶喜に触れる人はあまりいないようだ。

それも無理はないので、とにかく史料がないのた。残っているのは『家扶日記』という慶喜の身近にいた人が書いた日記くらいのようなのだ。そういう状況の中で書いたのがこの本、と言うわけだ。

いわば、間接的な史料からの考察というわけなのだが、そこから慶喜の生活ぶりを拾い出しているのはなかなか読み応えがある。

考えてみれば「何かをする」ことで業績を残す人は多いが、慶喜は「何もしないこと」で業績を残した人なのかも知れない。

それにしても新し物好きで、自転車に乗ったり、自動車に興味を持ったり、写真を撮ったり、といろいろと試している。こういう性格は若い頃と変わらないのだそうだが、こんな性格の人が何もしないでいるのはなかなか大変だったのかも知れないと思ったりもする。

流石にお殿様で、芸能人を家に呼んだりして楽しんでいる。こういう面もあったのだ。慶喜の別の面を見た思いがする。それはいいのだが著者が三遊亭円朝を「講談師」と記すのは、しっくりこない。史料にそう書いてあったのかも知れないのだが、「落語家」ではないのだろうか。