佐賀藩の武士牟田文之助が1853年9月から1855年9月まで剣術修行でほぼ2年間にわたって全国を旅した日記を元にした本だ。
丁寧な作りになっていて、巻頭には巡った土地の一覧表が、さらに終わりの方には他流試合のした道場の一覧が掲載されている。この二つの表を見るだけでもどこに行ってどのように他流試合をしたのかがわかるようになっている。
この本を読んでいてわかったのは、江戸時代においていつの頃からか剣術修行のためのやり方が整備され、剣術修行のための宿屋に泊まると、費用はその土地の藩が負担し、剣術道場への試合の申し込みは宿が手配してくれるようになっていたことだ。武士には剣術修行が必要だから、というので整備されたのだろう。この方法の起源とか定着する経緯が気になったが、もちろん、そのことについての記述はない。研究した人がいれば読んでみたいと思った。
剣術修行は、おそらくそれほど年代の違わない武士が回るので、これを契機に途中で友人を作ったりして交流のネットワークが作られていくことが示されている。武士たちの交流圏が意外と広いことがわかる。
また、どこに行っても酒宴を行っているので、そこにだけ注目すると物見遊山の旅かと勘違いしてしまいそうだ。
当時の旅の実態も仄見え、なかなか読みやすい本になっている。
この本が使った『諸国廻歴日録』は『随筆百花苑』第13巻に収められているので原文で読むこともできる。
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