内親王にして歌人という珍しい存在の式子内親王の伝記だ。百人一首の歌はよく知られているが、その生涯や人物についてはあまり知られていない。それを同時代の記録や歌集を駆使して描いている。
人物像を描くとしても歌の他には頼るものが少ないので自ずとその作品から考え方、感じ方を探ることになる。この本はそういう試みを行なっている。
式子内親王の歌は勅撰集等の歌集に多く入選している。また家集もあるが実際は残っている歌はほんの一部であるようだ。それでも作風を辿ることはできるようだ。
本の内容の大部分が歌の特に百種歌の解説、説明であるので所謂伝記を期待すると裏切られたようになってしまう。これは内親王の歌を検討することによって内親王の世界観に迫るという方法をとったためである。そのため歌の世界に詳しくない読者にはかえって難解になってしまっているかもしれない。しかし著者は丁寧にわかりやすく説明を行なっているので十分考えながら読み進めていけば著者の描いた式子像を味わうことができるだろう。
大袈裟に言えば歴史学と古典文学研究とが一体になったような著作と言える。今回よく理解できなかったこともあるので、しばらくしてまた手に取ってみたいと思っている。
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