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2024-04-07

黄昏のビギンの物語 佐藤剛著 小学館 小学館新書 214 2014年刊

中村八大、永六輔の二人による歌は好きでよく聞いていた。この本はこの二人が作った歌が日本のスタンダードになった事情について書いているというので読んでみた。

ところが初めの方は中村八大が音楽家になるまでの話たっだ。いつになったら歌のことが出てくるのだろうかと心配になる程だった。

それにしても中村八大はその音楽の経歴を10代の早い頃に始めていることにびっくりした。なるほど、あれだけのヒット曲を持っているわけだ、と納得させられる経歴だった。

この本を読むまで気が付かなかったのだが中村八大の作った歌、特に永六輔と共に作った歌はそれまでの日本の歌とは違っていたのだそうだ。そのことを説明するために中村八大の音楽歴を丁寧に辿っていたのだった。

中村八大のヒット曲はその当時の日本の歌とは違っていた。永六輔の詩もそうだし、メロディは雰囲気が全く違うのだ。そのことは中村八大がそれまでの日本の作曲家とは違っていることを示している。彼らの歌は分かりやすくて新鮮は感じがしていた。それは定型の表現を用いず、自然な話し言葉を中心としていたからだとこの本で指摘していたのでなるほどそうかと納得した。

そういえば、これまでの日本のヒット曲は特定の歌手の「持ち歌」とされていてその歌手以外の人が歌うことはあまりなかったように思う。著者はこの現象があったために日本には多くの歌手が歌う「スタンダードな曲」が存在しなかったのだとも指摘している。ところが中村八大はレコード会社に所属しないで活動していた。そしてその作品は多くの歌手が録音してもいた。それが「黄昏のビギン」という曲なのだ。この曲が日本にスタンダードな曲を定着させたのだ、というのが著者のこの本を書いた理由のようだ。

しかし「黄昏のビギン」は現在多くの歌手が歌っている形になるまでに時間がかかっているのだ。著者はこの曲がどのようにして生まれ、そして多くの歌手に歌われるようになったかを綿密な調査をもとにして丁寧に追いかけている。

音楽界の状況を確認するための記述から筆を起こしているので「黄昏のビギン」がなかなか登場しなかったのだと言える。

この本はそんな名曲のことを語っている。そしてこの曲を生み出した中村八大という音楽家を音楽の流れの中に位置付けてもいる。そういう意味ではスリリングな本でもある。そして自分はその流れの中にいたのだなとも思わせられた。

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