書名からは分かりにくいがスポーツをテーマにした本だ。副署名の「スポーツノンフィクション傑作選」が内容をよく表して言える。
スポーツ関係の書き物というとよくあるパターンは特定の競技や競技者に絞った内容だ。しかしこの本の著者はそうではない。
登場するスポーツは野球を始め格闘技、武道、水泳、陸上、競馬と幅広い。登場するのも人間だけではなく競走馬もある。
このような広い範囲の競技について一人で書く人がこれまでいたのかどうかはわからない。しかし著者はそれぞれのスポーツ、競技と競技者をよく理解しまた足繁く行われる場所に通っていることが見て取れる文章ばかりが集められている。
敢えてそのすべてに共通することを挙げるならば、書く対象への筆者の深い理解と温かい眼差しだろう。そしてどんなスポーツについて書くときでも著者の視線にブレはない。そういう点では稀有の内容となっている。
著者の視点は人間だけに注がれているわけではない。競走馬にもそれは注がれている。その柔軟性が読みやすい文体と相俟って落ち着いた世界を構築している。
スポーツをテーマとしているとは言ってもその結果をむやみに持ち上げたり貶めたりしないでいる姿勢も一貫している。そういう点がスポーツの魅力をわかりやすく伝えているのも確かだと思う。
著者の遺稿集ということなので年代的には大分前のものも含まれている。それでもそれらの文章に古さは感じられない。すっきりとした読後感のある得難い本だと思う。読み返しに耐える本だ。
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