「幕末の三舟」とよく言われる三人のうちの二人の評伝だ。
この二人は鉄舟は剣術、泥舟は槍術で名人と言われたことで共通している。またこの二人は鉄舟が泥舟の実家を継いでいることから兄弟関係になっているという共通点もある。
幕臣として有能であり、二人して上野に謹慎した慶喜を警護したことでも共通点がある。無理に比較するならば明治以降は鉄舟の方が有名であったことに違いがある。もう一人の舟は勝海舟である。
この三人は並べられてはいるが号に舟がある以外はあまり似ていない。海舟は政治家であり、鉄舟・泥舟はどちらかというと武人である。まぁ幕末に相互に連絡もあったということで三舟になったのかもしれない。
三人の共通点は「徳川家に忠実だった」ということかもしれないが、これは幕臣に共通していることなのであえていう必要はないかもしれない。
泥舟が明治以降は全く表面に出ず在野で終わっている。鉄舟は宮内省に関係して明治天皇の養育係となっているので明治になっても新政府に関係している。その点は海舟と同様だ。海舟との違いは明治政府に関係しても非難されていないことだろう。もっとも政治に関係したわけではないので非難される謂れはないのかもしれない。その点は政治家ではなかったことが影響していよう。
鉄舟、泥舟ともに資料が豊富とは言えないない。しかし日記や書簡はあるので著者はそれらを丁寧に読み解いて二人の歩みを記している。
著者の鉄舟と泥舟をわかって欲しいという思いからか引用する資料はほとんどが現代語訳になっている。原文でないのが残念と言えば言えるがその分読みやすくなっていて描かれている二人の人柄に迫っていけるようになっているのはありがたいとも言える。
もちろん参考文献が充実しているので直接元に当たりたければそちらを参照することができる。その点では行き届いた本である。
明治という時代に旧幕臣がどのように生きていたのかはあまり焦点が当たらないでいる。明治になってある意味で対照的な生き方をした二人についての客観的な記述の多い著作が出たのは明治期を考える上で大事なことだと思う。
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