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2023-07-13

奇跡のフォント 高田裕美著 時事通信社 2023年刊

副署名が二つある。一つは「教科書が読めない子どもを知って」。もう一つは「UDデジタル教科書体開発物語」だ。著者はフォントのデザイナーであって、教科書が読めない子どもと接触があったわけではない。それがUDフォントが販売されるようになって自社でもUDフォントを作ろうとなった時にUDフォントを必要とする人たちとして文字を読むことが困難な人が浮かんできたことが教育現場で必要とされるフォントに行き着きそれが教科書に適したデザインのフォント制作に結びついていった。この本はその過程を記している。

色々な人との出会いの結果、それまで教科書が読みにくかった子どもにも教科の学習がしやすくなるフォントの完成に至る筋道は単なる開発物語ではなく学習しやすい環境の提供という話にもなっている。

そういう点では単なる成功物語ではない。印象的なのは「UDデジタル教科書体を使えば生徒・児童の学習しにくさが解決できるわけではない」という著者の言葉だ。文字の読みにくさの原因は一つではないので一つのフォントを使えば全てが片付くわけではないというわけだ。この懐の深さが素晴らしいと思った。

文字の読みにくさという現象についての深い理解を持つ著者の、この現象へのわかりやすい説明も印象的だった。

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